- 2026.08.25
- VOL02
自家用太陽光発電の価値って何だろう?
昨年の8月に遅ればせながら自宅を太陽光による自家発電仕様にした。次世代エネルギーについて考える仕事をしているにしてはデビューが遅かったと我ながら苦笑いしている。マクロ的視点から言えば、自宅の屋根に太陽光を設置することで、一生活者として消費する電力の脱炭素化に貢献するのだ!と言ったことを考えなかったわけではないが、それよりも三階建ての一戸建ての三階に自室を作ってしまった(のは25年も前の事だが)ために、屋根への日射から来る部屋の温度上昇が半端でない。太陽光パネルを置けば少しは軽減されるかも?その上、脱炭素にも少しばかり貢献できるのであれば、一石二鳥、といった程度の動機だった。
ちょうど1年が経過したので、太陽光発電を取り入れた効果を整理してみるのも悪くない。同じような投資(?)判断に悩む方々もいらっしゃるかもしれないので、もしお役に立てば…
一番わかりやすいのは経済面の話だろう。太陽光による自家発電仕様にするための初期投資としてざっくり、①太陽光パネル、②パワーコンディショナー(パワコン、太陽光で作った電気(直流)を家庭で使える様に(交流)にする機会)、③蓄電池、が必要となる。我が家はこれに加えて、太陽光の余剰電力でお湯を沸かす、いわゆるエコキュートを使っているので、④大きな給湯器を含む一連の設備も必要になった。これらの設備は一括で購入すると3~4百万円ぐらいだっただろうか。ただし一括で購入した場合にはオペレーターによる監視サービスが付かない、ということで、10年リースプログラムを選択した。月額負担が約3万円程度だ。すなわち、電気を使っても使わなくても、この金額は定額で毎月支払うことになる。
昨年8月に設備を設置し9月初めから使い始めたのだが、9月下旬から12月中旬ぐらいまでは最も経済的効果を感じやすい。この季節は、比較的天候も安定していて日照が確保でき順調に発電もする一方で、冷房も暖房もほとんど必要ではない時期なので、昼も夜も、多少地域の電力会社様から電力を調達しなければならない日もあるが、ほとんど自家発電で賄うことができる。その上、余剰電力が発生する確率が高く、その分は地域の電力会社様が買い取ってくれる(売却に関する判断は自動で行われる。ちなみに売却価格は8~9円/kWH。一方、一般家庭が地域電力会社に支払っている電力価格は30~40円/kWHなので、微々たるものではあるが)端的に言えば、地域電力会社へのお支払いは1,000円内外だ。(ただし設備費用の3万円は払っている)さらに、地域電力の料金プランで、太陽光やエコキュートを利用している家庭用のもの、すなわち、夜の電気が割安に設定されているものに変更すると、日照がなく発電しない時間帯の電力でも少しばかり安く抑えられる。
冷房や暖房が必要な時期でも、日中にお日様が照ってさえいれば地域の電力会社様から電力を購入する必要がないので、価格を気にせず結構な電力が使える。特に熱中症リスクが高まる夏にはありがたい。我が家はオール電化ではないが、夏場には昼間にガンガン洗濯をして2時間も干しておけば乾いてしまう。お気づきの様に、我が家は乾燥機も使っておらず、いまだに自然乾燥機(=日照)で乾かしている。今更ながら、電力というのは自然でできることを人間の良い様に使い易くするためのデバイスを動かすための血液だなぁ、と感じる。
太陽光による自家発のプロ・コンはこれらだけではないが、このコラムの文量で全てを書ききることは不可能なので、一番わかりやすい経済効果について書いてみた。一言で言えば、家庭用太陽光を導入しても、設備費を含めた電力関連費用は全く安くはならない。一方で、日照の強い夏場の昼間にはほぼゼロ円電気がふんだんに使える。また、秋から冬の始め、そして春といった冷暖房の必要ない、日照が一定程度確保できる季節には、地域の電力会社からの電力購入を相当程度抑えることができる。コスト面では、設備費を支払っているので金銭的効果はないが、一方で、この電力は送電線を介さなくても使える電気、つまり、とっても強靭(リジリエント)な電気なのだ。
昨今では様々な要因で電力の安定的な購入に伴うリスクが散見される。地政学的影響で燃料の海上輸送が停まると火力発電による電力は価格高となるし、大雨や台風で送電網が損傷すると停電してしまう。太陽光による自家発電を導入した事で、少なくとも地域電力会社による送電網に不具合が起きたとしても、日照がある限り通常に生活できるし、日中の電力消費を少しセーブすれば蓄電地に貯まった電力で夜をやり過ごすことができる。そう考えると、太陽光発電を導入した事によって手にした最も大きな価値は、リジリエンス(Resilience, トラブルや災害、衝撃に対して被害を最小限に抑え素早く元の機能を回復・適応する強靭性)で、これを一言で言えば、「安心」だ。この家にいる限り、災害時にも3日ぐらいは籠城できるという安心感は何物にも代えがたい。が、しかし、これを金銭的価値に置き換えるのは、なかなか難しいのは間違いない……
ちなみに三階の自室のこの夏の気温は、若干さがった様な気もしないではない…
終